Vacation - 休暇

 思いがけず一日の休暇を貰ってしまった。

 どうやらずっと寝る暇もないほどに忙しくしていた俺を見かねたマネージャーが気を利かせた結果らしい。
 とは言えあまりにも急なことだったから、何をしたらいいのかすぐには思いつかずに、結局ぶらぶらと家の周りを散歩することにした。だって今友達に声をかけた所で今日は平日だ。みんなそれぞれの生活をしていることだろう。かと言って、同業の仲間やメンバーに声をかけても、やっぱりスケジュールはそう簡単には合わないだろう。

 かくして俺はご近所周りをぶらぶらと、宛てもない散歩の旅に出た。
 何故か早々に目が覚めてしまったので、現在はまだ朝の6時代。行きかうのは早朝ランニング中のおっさんだったりおじいちゃんだったり、はたまた遅れてやってきて大慌て顔の新聞配達のお兄ちゃんだったり。(多分バイトを始めたばかりのここら辺の地理に詳しくない新人だろう)そんな彼に心の中でファイト!と無責任な声援を送りつつ、表面上はなんでもない顔ですれ違う。(きっと彼は戻ったら説教されんだろうなぁ。マジファイト!)
 それにしても、早朝の散歩って言うのは爽やかで気持ちのいいもんだけど、なんだか俺の気分は晴れない。いや、晴れないっつーか、落ち着かないっつーか?うん、そっちのがしっくり来るな。なんつーか、多分仕事をするモードだったのに急に休暇を貰ったもんだから、体が休暇モードに切り替わってないんだと思う。
 『・・・あぁ、俺って根っからの仕事人間なのかもしんねぇわ』
 そう思って苦笑した。(それをすれ違いのおっさんが怪訝そうな顔で見てたけど気にしないぜ、俺は)
 一日何も予定がない日よりも、一日ぎっしり予定が詰まってるほうが充実感を感じる。
 一人より大勢、0よりも100。
 そう思う俺はもしかしたらただの寂しがり屋なだけかもしれない。けど俺はそんな自分が割と、結構気に入ってる。(自分大好き人間と言われようがなんだろうが気にしないぜっ!)

 真っ青に晴れた空を見上げて思いっきり伸びをしてみた。
 早朝の空気は清々しくて、思い切り吸った新鮮な空気で肺を満たす。
 まぁ折角貰った休暇ですから、こうなったら思いっきり楽しまなきゃ損でしょ。
 楽しむことにかけちゃ、俺って結構才能あると思うんだよねぇ。

 そんなわけで、俺は緩やかな散歩を切り上げて駆け出した。向かう先はもちろん我が家だ。
 出かける準備をして、街に繰り出そう。考えてみればやりたいことは山ほどある。時間も今日一日、がっつりある。
 きっちり気持ちを切り替えれば、見えてくるものはそりゃあ沢山。
 今日一日の休みじゃ足りねぇんじゃないかってくらい、なんだか充実しそうな予感だ。


 思いがけない休暇は、最高のVacationに。






 END.


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 一体この俺は誰なんだよ、って怒られそうなんですが。(笑)
 一応イメージは井ノ原氏でお送りしているつもりです。
 はい。

 2005.09.05.Monday
 Kohki Tohdoh Presents.
template : A Moveable Feast